僕らの研究室

僕らの日常を書きます。

新たな記号を生み出そう!

研究室で、写像に使う記号について話していました。

このブログの読者は、大学以降に数学を学んでいない人も想定していますので、まずは簡単に写像の説明をしておきますね。

???「なんすか写像って」

???「ダメだこれ笑」

写像とは、簡単に言うと集合から集合への対応規則のことです。

関数という言葉は聞いたことがある人がほとんどなのではないでしょうか。関数は写像の一部です。

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このような表記には見覚えがあるでしょう。

この関数のxに1を代入すると、6になります。2を入れると、11を返します。

このように、始集合(定義域)の元を1つ選ぶと、それに対して終集合の元を1つ返すようなものを「写像」というのです。

上の画像は、その規則に f という名前を付けているという状態です。

大学生は、写像を次のように書きます。

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Aが始集合でBが終集合です。

特に数の集合に値をとる場合に、その写像を「関数」と呼ぶのです。


とまあ、一応説明しましたが忘れてもらって結構です。

さて、話を戻します。上では f という記号を使いました。高校でそうだったように、大学以降の数学でも写像の名前として f や g はよく使われます。

そして、それと同じくらい φ(ファイ)や ψ(プサイ)も使います(専門によるかもしれませんが)。

ここで問題が発生するのです。

記号が少ない。

写像に名前をつけるとき、f , g の次には h が待っています。それでも足りなければ w を使うでしょうか。

φ と ψ を使ってしまったら、この次に必要になったときに困るのです。

π は自然な全射で使いたい特別な記号(個人的な意見です)ですし、

ρ や τ は少し毛色が違います(個人的な意見です)。

α や β も、やはりなんか違います(個人)。

どうしましょう?

と、些細な悩みを抱いたまま、特によい案が思いつくこともなく、長い間数学をやってきました。


そんなある日、研究室メンバーのT嶋くんがあることを思いついたのです。

T嶋「ニコちゃんマークで写像を書くのは?」

😀←こんなマークということですね。

T嶋くんは僕の研究室のムードメーカー的な存在で、突飛なことをよく思いつきます。 しかし、その突飛さが数学で発揮されることはありません。

彼の言い分は、色んな表情で写像を表せるので、記号不足を解消できるのではというものです。

これは手書きの上では問題ありません。

しかし、我々にとって「使える」とは、授業レポートや資料作成、論文を書く際に「使える」という意味です。

つまり、TeXで打ち込むことが出来ないものは「使える」とは言えないのです。

TeX(テフ)とは、簡単に言えば数式を含む文章を綺麗に作るソフトのことです。上の関数や写像の画像は、TeXで作成したものです。数学の論文等は、これを使って作成します。


ここから我々は、TeXを用いて写像をニコちゃんマークで表すことを始めます。

我々と言っても、やるのは僕と保護者くんです。

僕は大学2年生の頃からTeXで教科書のようなものをよく作っていましたし、保護者くんもその手伝いをかなりしてくれていましたから、人一倍TeXには詳しいのです。

特に保護者くんは、T嶋くんに

TeXの先生にでもなりたいの?」

と言われるくらい詳しいので、まあ正直僕は必要ないかもしれません。

案としては、:) という海外でよく見られる記号を90°時計回りに回転するという物が出ました。

TeXの自由度は恐ろしいほどに高く、やりたいと思ったことは大抵できます。流石の僕も文章中の文字を回転するコマンドは覚えていませんが、調べればあるだろうとは思っていました。そして、実際にありました。

:(コロン)を使うと目が小さいということや、写像が下すぎるということなど、いくつか問題はありましたが、それほど苦労することなくニコちゃんマークができました。こんな感じです。

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想像とだいぶ違ったらごめんなさい。たったこれだけでも、打ち込むコマンドは次の通りです。

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TeXを知らない人も、面倒くさそうだということは伝わるでしょう。

こんなに打ち込んで、出てくるのがニコちゃん1つです。

さて、これを元に他の顔も作りましょうか。

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僕は「オコちゃんマーク」と呼ぶのですが、生みの親であるT嶋くんは「しかめっつら」と呼ぶのでそちらでいきます。

f(x)は「エフエックス」と読みますが、上の記号を使ったときは「しかめっつらエックス」と読むことになります。なげえ。

これを使って写像の書き方をしてみるとこんな感じ。

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見づらい。

関数がいくつか出てくる高校数学の問題文を、関数を上の記号に変えて書いてみると、こんな感じ。

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これは酷い。


というわけで、今後使うことは多分ありませんが、作るのも使ってみるのも少しだけ楽しかったのでよしとしておきます。

実はこの話には少しだけ続きがあって、次回にそれを書こうと思います。

ではまた。