音声で解く数学!?
ある日、僕たちは次のような遊びを思いつきました。
機械に数学の問題を読ませて、 それを解いてみたい。
人間が(誤読の恐れがないように)問題文を読み上げるのであれば、それは難易度こそ通常よりは上がるものの、よほど長い文でない限りは解くことができそうです。
機械だと何が困るか?
より具体的には、Microsoft edgeの読み上げ機能を用いるわけですが、これだと何が困るか?
こいつ、読めない記号があるんですよね。
サンプルを置いておきますね。
YouTube経由ですみません。10秒くらいの動画です。
上のサンプルでは2つのテキストを読ませています。1つ目はこれです。
まあ、人間が伝わるように読むと
「絶対値始まりマイナス2絶対値終わりプラス3分の1」
みたいな感じですかね。
動画の再生が面倒だった人のために文字で書くと、動画の前半では上の式を
「パイプ(?)、にパイププラスいちさん」
と読み上げています。
マイナスが読まれていないのと分数の読まれ方が絶望的なんです。いちさんて。
しかし絶望はまだ終わりません。動画の後半では次の式を読ませました。
先ほどの式の前に「x+」を付けただけです。
それなのに読み上げの音声では3分の1が「13(じゅうさん)」と読まれています。
なんでさっきと違うねん。
このように、機械音声によって読み上げられたものを聞いた後には「何が読まれなかったか?」とか「こう読まれたけど多分こういうことなんだろうな」みたいな、推測のフェーズがあるんです。
ここがこの遊びの面白いところです。
ということで、実際に研究室の仲間たちに出題したので以下にはそのときの様子を書こうと思います。
中々文字では臨場感が伝わらないと思いますが、その辺はなんかこう、お願いします。
全部で3問やったのですが、3問目は僕がふざけたせいで答えが綺麗な数値でない問題になってしまったので、記事にはしないことにします。1問目と2問目のみ、お楽しみください。
まず1問目。音声のみの動画を置いておきます。再生してみてください。
研究室の仲間たちに出したそのままを再生しているので、遊び心で余計な文言があります。ごめんなさい。
さて、また動画再生が億劫な人のために読み上げられたものをなんとなく文字に起こしておきます。大体こんな感じです。
「方程式えっくす、つーにぷらす、わいわん、にいこーるよんで与えられる円の半径と中心は?」
これはかなり易しく作りました。以下、出題された保護者くん、M下くん、O下くんの会話です。解く様子をご覧ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
保護者「円の方程式を読み上げてるんだろうね」
M下「xとyと=4は聞き取れたな」
O下「多分半径は2だから、中心の座標を求めようか」
M下「『えっくす、つーにぷらす』って言ってるよな。多分この『つー』ってのは2のことなんだろうな」
保護者「多分(x-a)2+(y-b)2=r2みたいな形で書かれたものを読み上げていて、カッコとか2乗がちゃんと読まれてないんだろうね」
M下「そうだな。『つーにぷらす、わいわん』って読まれてるから、この『ぷらす』の直前までが(x-a)2の部分を表してるんじゃないか?」
保護者「『つー』と『に』で2回2が出てきてると思うから、後ろの『に』は2乗をそのまま読んじゃってるのかな?」
M下「ってことは、前半は(x?2)2の形か。あとは?の部分がプラスかマイナスかだけど」
O下「『つーにぷらす』って読むってことは、こいつは+(プラス)は読めるはずだから、何も読まれてないってことは?に入るのは-(マイナス)なんじゃない?」
M下「確かに!ってことは、後ろの『わいわん、に』ってのは(y-1)2か!」
保護者「だね」
一同「答えは、半径2、中心(2,1)!」
僕「正解」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読み上げたのは次の文でした。
プラスは読まれて、マイナスは読まれないというところに気がついたのは流石です。想定通りの解き方をしてくれました。僕も出題加減が上手いです。
楽しくなってきました。研究室の仲間たちも目を輝かせて第2問を待っています。
というわけで、次の問題です。自分で1つ答えを出してから解説を見ると面白いかもしれません(そのときは、文字ではなく音声でないと解けません)。
文字に起こすとこんな感じです。
「次の式を計算しなさい。答えは、整数で答えなさい。
ろくてんにぷらすろくてんふぁいぶ、かけるさん」
小学生でも解けそうな問題です。
しかしまあ、彼らは中々に苦労していました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
M下「普通に6.2+6.5×3だったら整数にならないから、どっかにカッコがあるんだろうな」
O下「でも、どこにカッコつけても上手くいかないように感じるね」
M下「(6.2+6.5)×3も6.2+(6.5×3)もダメだな」
保護者「怖いこと思いついちゃったんだけどさ」
M下「なに?」
保護者「ガウス記号が入ってるのに読まれてないんじゃない……?」
O下「それはヤバすぎる!!」
保護者「(僕を見ながら)こいつならやりそう」
M下「『ふぁいぶ』の後のスペースが若干気になるから、ここにカッコか何かきてるんじゃないか?」
O下「ってことは、×3の直前までカッコもしくはガウス記号があるってことか」
M下「×3の前まではスムーズに読まれてる気がするから、カッコの始まりは頭なんじゃないか?」
保護者「なら、[6.2+6.5]×3ってことかな?」
O下「そうなのかなあ」
M下「わからん、これでいこう」
保護者「[6.2+6.5]=[12.7]=12だから、それを3倍して」
一同「答えは36!」
僕「残念。答えは3でした」
一同「は!?!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読み上げたのは次の文でした。
『6.2』だと思っていたものは、じつは『ログ10(テン)2』だったのです。
これは聞き間違えても仕方ないですよね。 音声数学特有のキモさが出ています。
全く別方向に議論が進んでいく様子を見て、ずっとニヤニヤしていました。
答えを聞いて悔しそうな彼らの姿は今でも忘れられません。
まあ、6.2や6.5にガウス記号をつけた場合には読み上げで
[6.2]+[6.5]×3
や
[6.2+6.5]×3
や
[6.2+6.5×3]
の区別が難しく答えが定まりにくいことから、そんなことはしないだろうと推理してほしいものです。
2問目は不正解に終わりました。
焼却することにした第3問は、問題だけ置いておくことにします。答えが汚いことを除けば、音声数学特有のギミックを味わうことができるので、悪い問題ではありません。死ぬほど暇だったらやってみてください。
いかがだったでしょうか。
誰のためにもならないと思いますが音声数学の作問のコツを書いておくと、
・問題文をできるだけ短くする
・見れば簡単に解ける程度の難易度にする
・求めるべきものは明確にする(「整数値で答えよ」などの文言を入れる)
・推測の余地を残す(ここが最重要!)
あたりでしょうか。
よかったら友達と遊んでみてください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
多分、学生最後の更新になります。
それほどたくさんの記事を書くことはできませんでしたが、読んだ人がちょいちょい「面白かった」「あれ割と好き」などと声をかけてくれるのがとても嬉しかったです。
僕らの研究室はお終いですが、僕は文章を書くことが好きなので気が向けば更新するかもしれません。
時間があったら、また読んでやってください。
ありがとうございました。
ではでは!!